過払い金|借金の連帯責任を巡る裁判

争点
本件
処分

主文

11審原告及び1審被告の本件各控訴をいずれも棄却する。
21審原告の本件控訴に係る控訴費用は1審原告の負担とし,1審被告の本件控訴に係る控訴費用は1審被告の負担とする。

事実

第1当事者の求めた裁判

11審原告の控訴の趣旨
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)1審被告は,1審原告に対し,1383万4581円及びこれに対する平成12年3月11日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
21審被告の控訴の趣旨
(1)原判決中1審被告敗訴部分を取り消す。
(2)1審原告の請求を棄却する。

第2当事者の主張

1当事者双方の主張は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の事実摘示のとおりであるから,ここにこれを引用する。
2当審における当事者の主張
(1)1審原告の主張
1保証責任
次の事情があるので,本件保証責任を軽減することはできない。
仮に,限定保証である本件保証責任を減ずるとしても,包括根保証の場合に比べ,信義則による保証責任の制限の可否は相当程度緩やかに決せられるべきである。
ア本件保証は,限度額の定めのない包括根保証ではなく,元本限度額5000万円の定めのある限定保証であって,その限度額の範囲では保証責任があることが明確にされている。
イ本件保証契約が存続しているので,本件保証後本件各貸付がなされるまで20年を経過していることは,本件保証責任を軽減する理由とはならない。
ウ原告補助参加人のAに対する融資が相当に増大したとしても,1審被告においては上記5000万円の限度で本件保証責任を容認していたのであるから,その責任を免れることはできない。
エAの業績が悪化し始めたのは平成8年ころからであり,仮に,この時点で1審被告が本件保証契約の解約が可能であるとしても,1審被告は,平成7年末のAの原告補助参加人に対する債務残高7500万円のうち上記5000万円の限度の保証責任を負っていた。
オ1審被告は,Aの経営状態を容易に知り得る状態にあった。
カ1審原告が1審被告に対して請求している金額は,1383万4581円にすぎず,上記5000万円の限度の本件保証責任に照らすと,何ら1審被告の意思に反して不利益を課することにはならない。
2信義則違反の効果
ア信義則違反の効果は相対効である。
したがって,原告補助参加人に信義則に反する行為があったとしても,1審被告は,1審原告に対し,その信義則違反をもって対抗することはできない。
なお,原告補助参加人に1審被告に対する信義則違反があるのであれば,1審被告と原告補助参加人との間で解決されるべき問題である。
イ仮に,原告補助参加人の信義則違反により1審被告の本件保証責任が制限を受けるとしても,同保証債務履行請求権とは別個の債権である1審原告の1審被告に対する共同保証人間の求償金請求権が制限を受けることはない。
ウ上記のことは,1審原告が本件借入金債務につき保証をした際に他の保証人の存在を知らなかったとしても同様であり,その場合にも,1審原告は,1審被告に対し,上記求償権の全額を請求することができる。
他の保証人の存在を知らずに保証人となった者が,共同保証人間の求償金請求権の制限を受けるとすれば,民法が公平の原則に基づいて共同保証人間においてその負担部分に応じた求償権を認めた趣旨に反するからである。
(2)1審被告の主張
1本件保証約定書(甲7)と錯誤
ア1審被告は,本件保証当時,Aの原告補助参加人に対する500万円の証書貸付返還債務についての保証ではなかったにもかかわらず,これに対する特定保証(個別保証)であると信じていた。
なお,1審被告は,昭和53年1月20日付けの本件保証約定書(甲7)に署名押印しているが,その当時には保証債務の範囲欄の保証元本限度額である「五阡万円」等の記載はなかった。
イ1審被告は,本件保証が元本限度額5000万円の根保証であると認識していれば,原告補助参加人との間で本件保証契約を締結していなかった。
ウしたがって,本件保証契約は錯誤により無効である。
2保証責任の消滅
次の事情があるので,1審被告の本件保証責任は,信義則上消滅しており,1審被告はこれを1審原告に対して主張できる。
ア上記1アと同旨。
イ原告補助参加人は,1審被告に対し,本件保証契約締結後,主債務の状況について一切連絡,通知をせず,また1審被告が本件保証に係る債務の消滅を主張する機会を全く与えないまま,Aに対して本件借入金債務に係る各貸付を行ったものであるから,本件保証債務の履行請求をすることは信義則上許されず,更に原告補助参加人自体これを自覚して当該請求を断念していた。
ウ1審原告は,原告補助参加人に対して本件借入金債務の保証をする際,1審被告のような保証人の存在を念頭においておらず,1審被告が根保証人として存在することを認識し,その資力を期待していたものではなかったので,1審被告の本件保証責任が否定されても予想外の損失を受けるものではない。
3旧債振替
ア原告補助参加人は,平成10年11月27日,Aに対する1審原告の保証に係る本件各貸付による貸付金を,原告補助参加人がAに対して有する既存の債権250万円(当座貸越金返還債権)に充当しているから,いわゆる旧債振替禁止条項違反がある。
イしたがって,1審原告の1審被告に対する共同保証人間の求償金請求権は発生しない。

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第3証拠

原審の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから,これをここに引用する。
理由
1当裁判所も1審原告の本訴請求は,原判決が認容した限度において正当としてこれを認容し,その余は棄却すべきものと判断する。
その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の理由説示のとおりであるから,これをここに引用する。
(1)本件保証約定書(甲7)と錯誤について
11審被告は,ア本件保証当時,Aの原告補助参加人に対する500万円の証書貸付返還債務についての保証ではなかったにもかかわらず,これに対する特定保証(個別保証)であると信じていたこと,イ本件保証約定書(甲7)に署名押印した当時には,保証債務の範囲欄の保証元本限度額である「五阡万円」等の記載はなかったことを理由として,本件保証契約は錯誤により無効であると主張し,これに沿う乙10並びに1審被告及び原審証人Bの各供述部分が存する。
しかし,証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によると,本件保証約定書(甲7)には,その冒頭に「現在及び将来負担する下記表示の債務について,債務者と連帯しかつ保証人相互間も連帯して保証債務を負い」と明記され,その下部に「記」として「被保証債務の範囲」欄が設けられて「損害金およびその附随する費用については,この限度内のときはもちろん,これを超えても保証します。」と不動文字で記載された上,「保証元本限度額」欄が設けられていることが認められるから,甲7を一見すれば,1審被告が主張するような特定保証(個別保証)ではないことが明らかであるというべきである。
そして,上記引用の原判決説示(原判決5頁14行目から7頁9行目まで並びに同7頁17行目から23行目まで)のとおり,上記乙10並びに1審被告及び原審証人Bの各供述部分は採用することはできず,他に,1審被告の上記主張を認めるに足りる的確な証拠はない。
2したがって,1審被告の錯誤の主張はその前提を欠いているから理由がない。
そうすると,甲7の連帯保証人欄の1審被告名義の署名が1審被告の自署であり,その名下の印影が1審被告が自ら顕出したものであることは当事者間に争いがなく,的確な反証もない本件事案においては,甲7の1審被告作成部分は,民事訴訟法228条4項により真正に成立したものと推定され,これによれば,1審被告は本件保証をしたものと認めるのが相当である。
(2)本件保証責任について
11審原告は,ア本件保証が限度額の定めのない包括根保証ではなく,元本限度額5000万円の定めのある限定保証であって,その限度額の範囲では保証責任があることが明確にされていること,イ本件保証契約が存続しているので,本件保証後本件各貸付がなされるまで20年を経過していることは,本件保証責任を軽減する理由とはならないこと,ウ原告補助参加人のAに対する融資が相当に増大したとしても,1審被告においては上記5000万円の限度で本件保証責任を容認していたのであるから,その責任を免れることはできないこと,エAの業績が悪化し始めたのは平成8年ころからであり,仮に,この時点で1審被告が本件保証契約の解約が可能であるとしても,1審被告は,平成7年末のAの原告補助参加人に対する債務残高7500万円のうち上記5000万円の限度の保証責任を負っていたこと,オ1審被告がAの経営状態を容易に知り得る状態にあったこと,カ1審原告が1審被告に対して請求している金額は,1383万4581円にすぎず,上記5000万円の限度の本件保証責任に照らすと,何ら1審被告の意思に反して不利益を課することにはならないことを理由として,本件保証責任を軽減することはできず,仮に,限定保証の保証責任を減ずることができるとしても,包括根保証の場合に比べ,信義則による保証責任の制限の可否は相当程度緩やかに決せられるべきであるので,本件保証責任の軽減については限定されるべきであると主張する。
確かに,本件保証は,元本限度額5000万円の定めのある限定保証であるので,1審被告においてはその限度額等を予知できたものと認められ,包括根保証の場合と同様の責任制限を是認することは相当ではない。
しかし,上記引用に係る原判決理由説示(原判決7頁24行目から10頁8行目まで)のとおり,本件保証は,保証期間の定めのないものであるところ,原告補助参加人のAに対する平成10年2月以降の本件各貸付は,本件保証契約を締結した昭和53年1月20日から既に20年が経過しており,原告補助参加人は,継続的保証の保証人に対して昭和60年ころから5年毎に行っている保証意思の確認について,これをこれまで1審被告に対しては実施せず,また本件各貸付に当たりその保証意思等の確認もしていないこと,1審被告は,原告補助参加人から上記保証意思等の確認を受けていれば,相当期間の経過を理由に本件保証契約を解約していたものとうかがわれること等に照らすと,1審原告の主張を考慮しても,本件各貸付を知らなかった1審被告に予期せぬ過大な責任を負わせるのは不当であるというべきであるので,信義則上,本件各貸付について,1審被告の本件保証責任に合理的制限を加えるのが相当である。
そして,本件に現れた一切の事情を総合すると,1審被告の本件保証責任を他の保証人の2分の1の限度に減ずるのが相当である。
したがって,1審原告の上記主張を採用することはできない。
2ところで,1審被告は,ア本件保証契約締結当時,特定保証(個別保証)であると信じていたこと,イ原告補助参加人が1審被告に対し,主債務の状況について一切連絡,通知をしていないので,本件保証債務の履行請求をすることは信義則上許されず,また原告補助参加人自体これを自覚して当該請求を断念していたこと,ウ1審原告が原告補助参加人に対し,1審被告が根保証人として存在することを認識しないで本件借入金債務の保証をしているので,本件保証責任が否定されても予想外の損失を受けるものではないことを理由として,1審被告の本件保証責任は,信義則上消滅していると主張する。
しかしながら,上記のとおり,1審被告が本件保証契約締結当時に特定保証(個別保証)であると信じていたことを認定することはできない。
そして,1審被告においては,本件保証が元本限度額の定めのある限定保証であることは了解していたものと推認されるから,その限度額及び保証期間等に照らして,相応の責任を覚悟の上で保証を承諾したものというべきであるので,1審被告の本件保証責任が消滅しているものと断定することはできない。
のみならず,原告補助参加人が1審被告に対し,主債務の状況について一切連絡,通知をしていないとしても,本件保証契約が適法に解約されたりしていないので,その保証債務が存続していることは明らかであり,原告補助参加人が本件保証債務が消滅していることを自覚して当該請求を断念していたことを認めるに足りる的確な証拠もない(なお,原告補助参加人作成の乙1には「保証意志確認未実施および保証人の資力なく保証債務の請求はしない方が得策と思料」との記載があるが,その記載文言に徴し,それにより原告補助参加人が本件保証責任の追及をすべて断念していたものと認めることはできない。)。
さらに,1審原告が原告補助参加人に対し,1審被告が根保証人として存在することを認識しないで本件借入金債務の保証をしているとしても,民法465条が公平の原則に基づいて共同保証人間においてその負担部分に応じた求償権を認めた趣旨に照らすと,これによって1審原告の1審被告に対する共同保証人間の求償金請求権を否定することは許されないものというべきである。
したがって,1審被告の上記主張を採用することはできない。
3もっとも,1審原告は,ア原告補助参加人に信義則に反する行為があったとしても,1審被告は,1審原告に対し,その信義則違反をもって対抗することはできないこと,イ原告補助参加人の信義則違反により1審被告の本件保証責任が制限を受けるとしても,同保証債務履行請求権とは別個の債権である1審原告の1審被告に対する共同保証人間の求償金請求権が制限を受けることはないことを主張する。
確かに,信義則に違反するかどうかは,原則としてその特定当事者との間で相対的に判断されるべきものである。
しかし,1審原告の1審被告に対する共同保証人間の求償金請求権は,共同保証人間においてその負担部分に応じて認められた求償権であって,原告補助参加人の1審被告に対する保証債務履行請求権を前提とするものであるから,上記認定のとおり1審被告の本件保証責任が他の保証人の2分の1の限度に減じられる以上,1審原告の1審被告に対する共同保証人間の求償金請求権が制限を受けるものというべきであって,これを1審被告は,1審原告に対抗することができるものというべきである。
なお,原告補助参加人の信義則違反により1審被告の本件保証責任が制限を受けるにもかかわらず,1審原告の1審被告に対する共同保証人間の求償金請求権が制限を受けないとすることは,1審被告の不利益・犠牲において不当に1審原告を保護するものであって,かえって共同保証人間の公平を害するものというべきである。
4したがって,1審原告が1審被告に請求し得る求償金は,代位弁済金合計5533万8326円の7分の1(3.5人分中の0.5人分)相当の790万5475円であるというべきである。
(3)旧債振替禁止条項違反について
11審被告は,原告補助参加人がAに対する1審原告の保証に係る本件各貸付による貸付金を,原告補助参加人がAに対して有する既存の債権250万円(当座貸越金返還債権)に充当しているから,いわゆる旧債振替禁止条項違反があるので,1審原告の1審被告に対する共同保証人間の求償金請求権は発生しないと主張する。
しかし,上記引用に係る原判決理由説示(原判決10頁18行目から11頁17行目まで)のとおり,1審被告主張の旧債振替禁止条項違反の事実を認めることはできない。
2したがって,1審被告の上記主張を採用することができない。
(4)その他の当審における主張によっても上記認定判断(原判決引用)を左右するに足りないものというべきである。
2よって,原判決は相当であるから1審原告及び1審被告の本件各控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。

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